がん手術は取りきれないがん細胞が残ることで再発・転移することがリスクです。術後の体力・免疫力が弱った状態は、がん細胞に増殖の好機を与えているに等しい状況で危険なのです。
そのため、手術に際しては がん化している変性部位以上に大きめに切除したり、広い範囲を郭清することで、がん細胞の取り残しを予防していました。しかし、これらの方法は、患者の体に負担が大きいことが問題でした。また、切除/郭清する範囲を医師個人の経験と勘に頼らざるを得ないために、取り残しのリスクがどうしても残るもので、本当の手術の結果は数ヶ月の経過観察によってしか測れないものでした。
現在研究されている「がん細胞を光らせる術式」が実用化されると、がん細胞の取り残しリスクが最小化できます。最大の効果は、執刀する医師の技術差も縮小されることでしょう。
一人の天才医師が救える患者は数十人ですが、
数万人の誠実な医師が容易に使える効果的な術式ならば、
数十万人の命が救われます。
日本でも一日も早い実用化に向けて、治験の開始が待たれます。
くすし
2009年3月21日 日本経済新聞
東大・オリンパス、がんを1ミリも残さず切除 動物実験で確認
東京大学とオリンパスの共同研究グループは、体内にできたがんをほぼ確実に切除する新手法を開発し、動物実験で効果を確認した。特殊な薬剤を使ってがん細胞だけを光らせ、内視鏡などで切り取る。1ミリメートルのがんも残さずに手術することが可能で、再発防止につながる。人間への応用を目指して米国立衛生研究所(NIH)と組んで治験を進める計画だ。
研究成果は26日から京都市で開かれる日本薬学会で発表する。